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引き札からチラシへ

江戸時代の代表的広告媒体が「引き札」と呼ばれる紙片、つまり現在のチラシです。お客を引っ張ってくる札、といった意味でしょうか、昔から開店披露や商店の広告。宣伝のために用いられてきたのです。今では知っている人もいなくなり使われなくなった日本語の一つですが、明治以降近代の頃は夏目漱石の小説「門」に出てくるところをみると、小説というのは一般人の読者が分かる言葉で書かれますから、まだまだ広く使われていたのでしょう。いつから引き札という言葉が廃れ、チラシという言葉が広まったのかはわかりませんが、日本が物量に勝るアメリカとの戦争に負け、何もなくなった焼け跡から、世界の奇跡といわれる経済復興と世界第2位のGNPにいたる高度成長期にはチラシという言葉が広告のビラ、宣伝のビラの呼び名として引き札に代わって定着していたことは確かです。終戦間近に米軍の航空機により爆弾とともに空からまき散らされた降伏勧告のビラの記憶がメッセージを広くまき散らすイメージとして強く焼き付いたことでしょう。日本の庶民の生活もだいぶ落ち着いた昭和30年代、百貨店の屋上のアドバルーン上がる晴れた日には、よくセスナ機が開店広告のビラをまき散らし、まだのどかな街角に風に乗って飛んで行ったものです。

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